職場も家も暑すぎるなか、なんとか生き延びている……そんな感じになっている北海道の夏です。
もうね、空調設備が本州ほど整っていないから、人もそうだけど建物が暑さに弱いんですよ。エアコンなんて家につけている方が少ないんで。
色々世間が慌ただしい中、久しぶりにミステリー小説を読みました。
フォロワーさんが教えてくれたけど、話題になってたんだな。
終盤のどんでん返しが面白くて、サクサク読み進めることが出来て面白かった!
香港警察の「名探偵」と呼ばれた伝説の刑事クワン。2013年、末期がんで余命僅かな彼のもとに、難事件の捜査で行き詰まったかつての部下であるローがやってくる。クワンが最後の力を振り絞り提案した前代未聞の捜査方法とは―。戦後香港の現代史と一人の警察官人生を重ねながら、権力者と民衆の相克を描く華文ミステリーの傑作。
1989年、新人刑事のローは凶悪犯罪捜査係に配属され、多くの犠牲者を出した九龍の銃撃戦の意外な黒幕を知ることになる―。60年代に文化大革命の煽りで始まった反英暴動、2010年代に起きた雨傘革命とも呼ばれる市民運動。香港を象徴する二つの“反政府の時代”が時空を越えて繋がる壮大な社会派ミステリー。
中編6つで構成されている上下巻ですが、1つ読むのに1時間弱くらいで、合計5~6時間くらいかな。
長編って一気に読み進めないと、結構展開忘れちゃったりするので、少しずつ読み進めることが出来て、この構成はありがたかった。
どの話も中盤くらいまではなんとなく予想がつくんですけど、終盤のどんでん返しが面白いんですよね。あ、そういうことか!ってなって犯人たちこわいな…ってなる。
話自体はどれも独立していて、単独でも楽しめるけど、最後まで合わせて読むともうね、うわぁ…ってなる。
あ、そうきたか…ってなって、もう一回読みなおしたくなる。
香港の社会派ミステリー小説といった感じで、香港の歴史も絡んだ展開が多いんですけど、私個人としては読みにくいということはなくて、面白かったです。
翻訳本は読みにくいと感じることも多いので、ここも良かったです。
久しぶりに紙の本をがっつり読んだので、そのリハビリとしてはちょうど良い本でした。
全体を通すと長編レベルなんだけど、独立した話だから少しずつ読み進めることが出来るし、トリックも難しすぎず簡単すぎずで、この塩梅が私にはちょうど良かったです。
とりあえずミステリなんか読むか~って人にもおすすめ。
ここからはエピソードごとのネタバレ感想です。トリック自体にはあんまりふれてないですw
黒と白のあいだの真実
まさかそんな脳波で本当に意思疎通できんの!?絶対嘘でしょって思っていたら本当に嘘だった。本当だったらいいのにな、って思いながら読んでたよ。夢の技術じゃん。
大体最初の方で殺人を告白しようとしている人間は真犯人ではないよな、って感じで読み進めていたら本当にそうだった。次男よ。
犯人がまじで一番怖い話。『借りた時間に』を読んだ後だとやるせなさが凄いんだよ。
かつて事件を一緒に解決した協力者と気づかずに、ためらいなく自分の罪を隠蔽するために殺すし、兄と慕っていた人間を息子を利用して殺人を仕向けるし、もうなんだよこの悪党は…って感じ。
かつては警察官になることを検討していた時期もあったんだぜこの悪党は…
恩師であるクワンの命さえ利用して、犯人逮捕に繋げたローはすごいよ。まあでも私もクワンさんの立場なら、自分の命さえ利用して捕まえてほしいとは思った。
この家族は幸せになれるのだろうか。難しいだろうな。
任侠のジレンマ
ビデオ撮影したの、記者じゃなくて多分警察関係者かなと思っていたら本当にそうだった。良心ある記者なら最後まで黙って撮影しなさそうなのと、記者だったら警察より前に雑誌に載せるかなと思ったっていう理由だけどw
殺人自体がもう片方のヤクザをおびき寄せる罠だったのにはビックリ。
まあ確かに殺される理由がなかったんだよな。動機が見えてこないから犯人が見えてこなかったけど、殺人自体がなかったとは。
事件が偽装されたものだから、正確には犯人がいないというか、首謀者が主人公サイドっていう。
囚人のジレンマの均衡を打ち砕くために、ここまでするとは。まあ本人の協力も得られて、身の安全を守るためなら納得。
本人を崩せないなら、そうじゃないところを狙うってことか。本人がいくらガードを固めていても、これをされると確かにキツイな。
ターゲット、多分この話で一番の極悪人のはずなのに、話の中では犯罪の犯人ではないっていうw
ローの最後の言葉が切ない。家族を殺された復讐のために生き続けて、身の危険も省みないってめっちゃ心配するわ。彼女には少しでも心穏やかに生きていってほしいけど、難しいんだろうな。本人も望んでいない気がするし。
法律とか警察で対処出来ないと、こうやって私刑に走る人たちがまあ出てくるだろうなっていうのは分かる気が。そりゃまあ自分の家族を殺した人が裁きも受けずにのうのうと暮らしていたら、そうなるよねって。
でも私刑を行ってその人自身が救われるかっていうのはまた別の話だと思うから、今回ちゃんと捕まって裁きを受けられるようで良かった。もう世間に出てこないでくれ…
クワンのいちばん長い日
ミステリ的には一番これが面白かった!
薬物ばら撒き事件や凶悪犯の脱走、事故などが絡み合って一つの事件に繋がるのが分かるのは楽しかった。
複数の事件をどうやって回収するのかな~と思っていたら、見事綺麗に畳んでいた。
あと犯人の正体を言い当てた時、全然予想していなくて一番ビックリした。
脱獄と成り代わりのためにここまで盛大にする!?とは思ったがw
ムショにいながら、これだけの犯罪を指示出来たの恐ろしすぎる。
この犯人も本当に狡猾で、自分の目的のためなら人を殺すことを躊躇いなくするタイプの悪党で、胸糞。いや全体的に犯人たちはそんなのばっかだが。
もうこいつこんなに頭良いなら真っ当なビジネスしろよ…ってなったわ。
テミスの天秤
TT絶対怪しいと思ったら怪しいどころではなかった。
いやこいつ無関係の人たち巻き込みすぎじゃない!?最悪すぎる。
しかもそこまでの事件を起こしておいて自殺させてしまったのは、クワンがちょっと甘かったんじゃないかなとは思った。
自首をしてくれとかいって少しでも検討するタイプに見えないだろ。こいつ、多分勝ち逃げしたいタイプでしょ。実際勝ち逃げしたし。
自分の殺人を隠蔽するために、無関係の人々や仲間、敵対している犯罪者とはいえその人たちも巻き込むって卑劣すぎるでしょ。仲間意識の欠片もないぜ。
確かにこの人に惚れてしまった女性は見る目がない。でもこういう人が魅力的に見えるのも分かる。
上層部が隠蔽したくなるのも分かるようなスキャンダラスな事件だが、クワンが兄を逮捕して公表することになったのかな。
捜査で手に入れた情報を利用して行った警察関係者の殺人を警察が隠蔽したって相当でしょ。もし露呈したら信頼の失墜ってレベルじゃねえよ。まあ隠したくなる気持ちも分かりますが。
最後まで身勝手だったな。残された婚約者の女性のことなんて何も配慮していない、自分勝手な犯人でした。
いや~~~1番この犯人にムカつきましたw卑劣というか自分勝手さでは一番じゃない!?いや結構他の犯人たちも中々に自分勝手だが。
借りた場所に
爪の甘い誘拐は身代金が目的ではない、と金田一で履修していたため、お父さんが目的なのかな、ってもう早い段階で思ってしまったw
ミステリ的にはちょっと物足りなかったです。大体こういう時家政婦はグルなんだよ。
人のセコいところを描くのが上手い気がする。
借りた時間に
語り手が変わり、最後のどんでん返しが面白かった。
まさかあの義兄弟が出てくるとは。
クワンさんも青い時期があったんだね、と分かるのと同時に、『黒と白のあいだの真実』の辛さが増す話でもある。
この時はこんなに慕っていたのに、殺意が出るほどの関係性になってしまうとは。
多分警察に入っていたらクワンさんより活躍していた気がする。その才能を人々を不幸にする方向に使ってしまうなんて悲しいねぇ。
香港の歴史が詰まっている話でもあり、今までとは違う毛色だが、締めとしてふさわしい話だったなと思った。
犯人たちが警察に拷問を受けていたと分かるシーン、犯人たちは殺人を企てていたけど、それでもやるせない。
クワンさんの判断の甘さで最後に悲しい事件が起きてしまい、彼らの縁はここで終わってしまったのも切ない。
クワンさんが判断を誤らなければ、彼との縁は続いていたのだろうか。
クワンとローは最後までブレない姿勢の刑事で語り手として信頼できるので、その点も読みやすかったです。語り手の視点も疑う系って、モノによっては疑いすぎて疲れるのでw
久しぶりにミステリ読んだけど、面白かった~~!
ミステリ特有のトリックなどが解けてスッキリする感覚が、気分転換になって良いですね。
トリックも含めて構成がめっちゃ上手くて面白くて、面白さの波はあったものの、最後までノーストレスで読み進めることが出来て良かったです。
ミステリージャンルの体験って私は、東野圭吾や金田一の漫画とか、逆転裁判などのゲームくらいしかないんですが、挫折しないで読めて良かったです。